【コラム】「適量の飲酒」と健康との関係性に新見解 「酒は百薬の長」ではない?!(後編)

前編では、人々が信じてきた「少量の酒は健康に良い」ことを裏付ける「Jカーブ効果」について、その疑問点を紹介した。裏付けてきたJカーブ効果は、実は相関関係を現しているに過ぎず、因果関係ととらえることはできないということ。そして、必ずしも少量のアルコール摂取がすべての疾患において、死亡リスクを減らすわけではないということ。アルコール性肝障害が典型例だ。

 

多くの論文に重大な“ミス”

これらのような疑問に対し、多くの人達によって賛否両論の研究報告がなされてきたが、最近、それらの総集編ともいえる研究論文が発表され、話題となっている。オーストラリア国立薬物研究所のターニャ・クリスティー博士らのチームが、国際アルコール薬物研究誌「JSAD」の2016年3月号に発表した。

クリスティー博士らが酒と健康の関連を調べた過去の論文87件を分析した結果、その多くが、病気が原因で禁酒している人々のことを考慮の対象から除外している、という統計ミスを発見した。酒を飲まない人々の中には、糖尿病や心血管疾患などで医師から禁酒をさせられている人や、もともと体が弱くて飲めない(あるいは飲まない)人もいる。こうした人々は早死にする可能性が高いのに、酒を飲む人と全死亡率を比較する際、統計に反映されてこなかった。そこで、「病気による飲酒」を考慮しない論文をすべて除外し、残りの論文を改めて分析し直すと、「適量の飲酒が、酒を飲まない人より健康的で長寿をもたらす」という結果は得られなかった。

 

本当の「適量」とは……

また今回の研究で、もっとも健康によい「適量の飲酒」は、「10日間の合計アルコール摂取量が1ドリンク未満」だとわかった。「1ドリンク」とは、ビールなら中ビン半分、日本酒なら0.5合にあたる。酒好きにとっては、1日の飲酒量としても1ドリンクでは物足りない。ましてや10日間で1ドリンクは、「飲んでいない」に等しい量である。

この研究結果に対して、さらに賛否両論の意見や研究報告が出てくることが予想されるが、これまで酒好きを喜ばせてきた定説が揺らぎつつあることは間違いない。

 
参考記事
【コラム】「適量の飲酒」と健康との関係性に新見解 「酒は百薬の長」ではない?!(前編)

 
(写真はイメージ)

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垣渕 洋一

専門:臨床精神医学(特に依存症、気分障害)、産業精神保健。資格:医学博士 日本精神神経学会認定専門医

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