(コラム)「アルファ碁」対局を終え、人工知能と人間との境界線を可視化する 前編

世界中が見守った人工知能「アルファ碁」の戦い

「碁は単なるゲームではない。プレイヤーやファン、専門家の生きざまであり文化の息遣いだ。」

グーグルの公式ブログはそう語り出し、2010年に同社が買収したディープマインド社の「アルファ碁」と韓国棋士イ・セドル9段との戦いを振り返っている。この戦いはアルファ碁の4勝1敗で幕を閉じたが、米国では「囲碁のルール(Go rules)」と「碁盤(Go boards)」というキーワードの検索数が著しく増加し、中国では延べ数千万人がライブ中継を閲覧し、韓国では碁盤が飛ぶように売れたという。

人工知能関係者は、誰もが「まだプロ棋士には勝利できないのではないか?」と考えつつ、世間に人工知能の可能性を広める絶好の機会だと、密かに期待している部分があったように思われる。対して、人工知能の構造や勝負する本質的な意図を知らない一般の人々は、「人工知能が人間に勝つ」瞬間だけを見届けたのではないだろうか。

しかし、この興奮は間もなく静まり、しばらくはこのようなイベントは見られないだろう。なぜなら囲碁こそが、打つ手の選択肢が最も多いボードゲームだったからだ。そして、次に目にする「人工知能と人間の戦い」はゲームの世界ではない可能性が高いということを意味している。

今回は戦いの内容や人工知能の構造の話はおいておき、この先のこと、人工知能と人間の境界線について整理しておこう。

(コラム)「アルファ碁」対局を終え、人工知能と人間との境界線を可視化する 前編

 

4勝1敗の「1敗」が意味するもの

グーグルは戦いを通じて「学んだことが二つあった」という。

一つ目は、「人工知能が他のさまざまな問題を解くことができる予兆を得た」ということだ。もともと、コンピュータはよりミクロの問題を解決し、人間はよりマクロの問題を扱う立場として人間がコンピュータを扱う歴史だった。しかし今回の戦いでは、人工知能が人間にも発見できなかったマクロ的視点をもって解決策を提示することができた。これは、人間を代替する人工知能の領域が今後ますます拡大していくことを示唆している。

二つ目は、「人工知能が常に人間のように振る舞った」ことだという。人工知能はその名の通り人間の脳の構造を模倣したコンピュータアルゴリズムだ。それがうまく作動し続け、時にはおかしな解答を出して負けることはあったが、それも含めて「人間のように」振る舞い、ただのルールに基づいた行動でなく戦いの中で新しいアイデアや機会、解決策を生み出し続けたことが大きな発見だった。

そういう意味でも5戦全勝でなく1敗したことは、逆に人間らしさの象徴であったのかもしれない。第4戦、イ・セドル9段の独創的アプローチにより、アルファ碁は今までの経験では解答できない「問い」を与えられ音を上げたということだ。まさに打つ手がなく、ちゃぶ台を返す漫画のようなシーンを作り出したと言える。

(コラム)「アルファ碁」対局を終え、人工知能と人間との境界線を可視化する 前編
[画像出典:googleオフィシャルブログ]
ここまで、「ゲーム」の世界での人工知能の進化を見てきた。次回はゲームの外、実世界での人工知能がどうなっていくかについて触れていこう。
(冒頭写真はイメージ)

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新城 元

東京工業大学大学院卒。ITジャーナリスト。インターネット関連企業に務めるかたわら、NEWSALTを立ち上げる。

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