世界最大の霊長類であるグラウアーゴリラ(ヒガシローランドゴリラ)の生息数が激減していることがわかった。このまま保全措置を取らなければ、あと5年ほどで絶滅してしまうかも知れない。米国の野生生物保護協会(WCS)のアンドリュー・プランプトリ氏らによる論文が、19日に米科学誌プロスワンに掲載された。
20年で77%減少
グラウアーゴリラの生息域は、コンゴ民主共和国(DRC)東部のカフジビエガ国立公園に限定される。1994年のルワンダ大虐殺により、数十万人の難民がDRCに押し寄せ、1996~2003年にはDRCで内戦が生じた。ゴリラの生息範囲にもいくつかの武装グループが存在し、彼らはゴリラを含む野生動物を狩猟して食用としたり、他の地域に密輸したりした。ゴリラは法律で保護されていたが、その体の大きさと、チンパンジーなどの他の大型霊長類に比べて地上を移動するため追跡しやすく、銃で比較的容易に殺すことができたことから、野生動物の肉として珍重された。また、同時に武装グループにより森林も破壊された。その結果、内線が始まる前の1994~1995年の調査で1万6900頭と推定された野生のグラウアーゴリラの数は、2011~2015年の調査では、わずか3800頭と推定され、77%の減少となった。
ゴリラ属全体が「深刻な危機」に
マウンテンゴリラとグラウアーゴリラは、いずれもヒガシゴリラの亜種だ。国際自然保護連合(IUCN)種の保存委員会(SSC)が提供する「絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト」のカテゴリーでは、マウンテンゴリラは、絶滅危惧の「深刻な危機(CR)」に分類されている。グラウアーゴリラは、これまで絶滅危惧の「危機(EN)」に分類されていたが、今年度版で「深刻な危機(CR)」に更新された。「深刻な危機(CR)」に分類されるのは、3世代かけて80%以上減少した場合。一般的にゴリラは30~40年生きるが、グラウアーゴリラは平均で1世代が20年である。今回の結果は、1世代だけで少なくとも77%減少したことを示している。
マウンテンゴリラとグラウアーゴリラのどちらも「深刻な危機(CR)」となったことで、ヒガシゴリラ種全体としても「深刻な危機(CR)」に分類された。また、ニシゴリラ種は2007年から「深刻な危機(CR)」に分類されていたため、結果として、ゴリラ属全体が「深刻な危機(CR)」に分類されることとなった。
グラウアーゴリラの壊滅的な衰退を逆転させるには、かなりの努力が必要となる。たとえば、現在でも鉱山労働者は、彼らのキャンプ周辺の野生動物の肉で生計を立てているため、保護地域内での採掘を停止する必要がある。このため、著しく大きな保護の取り組みがなされない限り、あと5年ほどでグラウアーゴリラが絶滅する可能性がある。
画像提供:ウィキペディア(カフジビエガ国立公園)